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省エネのカギとなる窓ガラスの断熱性能について、メリット・デメリットを交えて解説していきます。
進化を続ける省エネハウスの高性能断熱材や建材、冷暖房設備。しかし、熱の出入りが多い肝心な窓ガラスが従来のままでは、省エネ効果も半減してしまいます。
実は夏場に外から入り込む熱気の71%は窓やドアから。そして冬場に家から逃げ出す暖気の48%も窓やドアからという例があります(※1992年の基準で建てた、アルミサッシ単体ガラス入り窓の住宅モデルの例)。これでは、せっかく他の部分を省エネ対応にしても、快適に過ごせないどころか、冷暖房費も節約できない状態となってしまいます。
省エネ効果のある窓ガラスに変えることで暑さや寒さの違いを体感できるようになり、快適度がアップします。また断熱効果以外にも、防音や結露対策にもなるのです。
このように省エネのポイントとなる窓ガラス。サッシはそのままでガラスのみ交換する方法など比較的容易でリフォームにも対応できる施工法もありますので、省エネハウスの実現に向けて検討してみてはいかがでしょうか?
窓ガラスの断熱効果が重要であることはよく分かりましたが、実際にどのような種類の断熱窓ガラスがあるのか、事前にしっかり情報を集めておくと安心ですね。
ここでは、3種類の断熱ガラスの特徴をご紹介します。どのような機能をどの程度求めるのかを踏まえた上で、よく比較検討してみてください。
今回ご紹介する3つの中では基本的な断熱ガラスで、2枚の板ガラスをメインに構成。2枚の板ガラスの間に中空層があり、外側からデュアルシール、乾燥剤入りスペーサーの順に枠を確保しています。この中空層に封入された乾燥空気はガラスより熱伝導が低く、結果的に熱移動を防止して断熱性が高まる仕組みになっています。
複層ガラスの一種であり、Low-E複層ガラスとも呼ばれています。構造自体は先ほどの複層ガラスと同じですが、ガラスにLow-E膜という特殊な金属膜がコーティングされています。この膜によって暖房熱が反射され、室内の保温効果がさらに高まる仕組みとなります。
またLow-E膜の種類によっては、夏場の太陽熱や日差しを遮ることも可能で、暑さ対策にも適していると言えるでしょう。
こちらも基本構造は複層ガラスで、エコガラスのアップグレードと捉えると分かりやすいでしょう。一枚はLow-Eガラス、もう一枚は真空層を保有するマイクロスペーサーのあるフロート板ガラスを採用することにより、2枚のガラスの間が真空状態になります。これは魔法瓶と同じ原理なので、熱の移動が起こらない環境となり断熱効果が得られます。3つの中で最も断熱効果の高いガラスです(※)。
またエコガラスと同様に、Low-E膜の種類によっては夏場の太陽熱や日差しを遮ることも可能で、暑さ対策にも適していると言えるでしょう。
断熱効果は窓ガラスによって大きく違いが出ることは分かりましたが、実はガラスのみならずサッシによっても断熱効果を高めることが可能です。ここでは二重サッシと樹脂サッシの2つについてご紹介します。
サッシが一重の複層ガラスと違い、窓そのものが二重になっている構造が二重サッシです。どちらか一方が断熱性の低いアルミサッシでも、もう一方が樹脂サッシであれば断熱効果が期待できます。二重にすることで、冷たい外気と暖かい室内の空気が触れ合わないので結露の防止にもなり、防音や防犯上のメリットも得られます。
二重なので、開閉作業が2倍になることから換気が面倒なこと、サッシも2倍になるのでお掃除の手間が考えられますが、断熱効果と引き換えに検討する余地はありそうです。
断熱効果の高いサッシの代表格が樹脂サッシ。通常のアルミサッシと比較すると、Low-E複層ガラスの樹脂サッシや、Low-Eガラスの内窓を設置した二重窓の場合は、窓から逃げる熱ロスを約74%も抑えることができます(※)。断熱・遮熱・気密性に優れているため、冷暖房として使用するエアコンの電力消費を大きく抑えてくれると同時に、CO2の削減にもつながり省エネでエコなサッシになります。
※参照:樹脂サッシ工業会「省エネ」
http://www.p-sash.jp/effect/shouene.html
窓ガラスやサッシの構造の他に、設置場所でも省エネ効果を得られます。ここでは、設計の際にポイントとなる風通しと採光を考えた窓の設置についてご紹介します。
お住まいの地域や方角、季節や時間帯によって変わる風向き。さらには周辺に建物があるかないかでも、風通しは左右されます。風通しを考えて、風の入口と出口に窓を設置することがポイントです。
また、正面からの風を取り込むことに適した引き違い窓は、実は家の中をすり抜ける風を取り込むには適していません。ドアのように開閉できる縦すべり窓を設置すると風を上手に取り込めるので、エアコンの使用を抑えて夏場を省エネで快適に過ごすことができるでしょう。
健康で快適に暮らせる家に欠かせない採光。光を上手に取り入れることで照明を使用する時間を減らし、太陽の暖かさを室内に取り込んで冬場の暖房の使用量を減らすメリットがあります。窓の設置は大きさ以上に方角と部屋の使用目的が重要になります。
そのほか、季節による日照時間、プライバシーなど、多くの要素が関わってきます。デザインも天窓や高窓、地窓などスタイリッシュなものも選択できますので、設計の際にしっかり確認しておくといいでしょう。
※坪単価は公式サイト・SUUMOなどで、2019年12月時点、最も安価な省エネ住宅を調査